はじめに
映画女優・若尾文子-増村保造、溝口健二、吉村公三郎…日本を代表する監督のもと、市川雷蔵、勝新太郎、田宮二郎…昭和を代表する伝説の名優たちと共演し、女優として絶えず進化してきましたKADOKAWAが保有する大映や角川映画の豊富なライブラリー作品を次世代に継承すべく立ち上げたブランド「角川シネマコレクション」。昨年開催した「京マチ子映画祭」、現在全国順次上映中の<没後50年特別企画>「市川雷蔵祭」に続く、劇場上映企画となる今回は「若尾文子映画祭」を5年ぶりに開催、その目玉として、代表作のひとつである『刺青』を4Kデジタル復元版でお届け致します。自らの欲望のままに男を騙す娼婦、自分の生き方に目覚めていく天真爛漫な少女、相手を思うあまり狂気にはしる妻…女性が持ついくつもの顔やそれら女性の壮絶な人生を見事に演じきった映画女優・若尾文子の魅力をスクリーンでご堪能頂けますと幸いです。
プロフィール
1933年(昭和 8年)11月 8日東京都生まれ、一男四女の末っ子。1945年、疎開先の仙台で終戦を迎える。女学生時代は読書に没頭する引っ込み思案な性格で、同級生に付けられたあだ名は“石仏”。1949年、仙台を巡業中の長谷川一夫に出会ったことが転機となり、翌年女優を目指し単身上京。1951年、大映第5期ニューフェイスに合格。翌1952年『死の街を脱れて』でスクリーンデビュー、明るく庶民的なキャラクターで注目を集め、雑誌の人気投票やブロマイドの販売数で1位を獲得するなどトップスターの仲間入りを果たす。溝口健二、小津安二郎、市川崑、川島雄三、吉村公三郎、そして後の名コンビとなる増村保造など、巨匠たちの名作に次々と起用され、本格女優としてのキャリアを積み、1961年『女は二度生まれる』『妻は告白する』でキネマ旬報賞、NHK映画賞、ブルーリボン賞、日本映画記者会賞、ホワイト・ブロンズ賞の主演女優賞5冠を達成。続く1965年には『清作の妻』『波影』でも同5賞の主演女優賞を受賞、2度目の5冠に輝く。そして1968年、『不信のとき』『積木の箱』でキネマ旬報主演女優賞3度目の受賞という前例のない快挙を成し遂げる。2015年までの映画総出演数は計160本。1970年以降は舞台やテレビドラマにも活躍の場を広げ、ソフトバンクのCMに、白戸次郎(犬のお父さん)の母親役で登場し話題となった一方、国内外で主演映画が定期的に上映されるほどファン層が拡大。2014年にはキネマ旬報社によるファン投票で、日本映画女優部門第2位に選出(「オールタイム・ベスト映画遺産日本映画男優・女優100」より)されるなど、今なおファンを獲得し続けている。
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